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「肉は腐りかけが美味しい」って本当?

「肉は腐りかけが美味しい」って本当?

いらっしゃいませ。nikuhackの谷です。

今回はタイトルの通り、「肉は腐りかけが美味しい」という有名な言い回しは本当なのか?について肉のプロ目線で解説します。

まず最初にはっきりと言わせていただきますが、この言い回し、絶対に鵜呑みにしないでください。

腐りかけが美味しいというのは言葉の綾のようなものであり、「切られた肉を腐る直前まで放置すれば美味しくなる」というものではありません!

これをまず頭にいれていただいたうえで、じゃあ何でそんな言い回しが存在するのかということをお話しします。

腐りかけが美味いは何で言われるようになったのか?

「肉は腐りかけが美味しい」という言葉が何で存在するのか、それは諸説あるかもしれませんが、僕は肉の熟成と関りがあると考えています。

腐りかけ、と言うと単純に冷蔵庫の中で時間のたった腐敗に近い肉を想像されるかと思いますが、この「肉は腐りかけが美味しい」という言葉は、あくまで「熟成」を由来とするワードです。

熟成と腐敗は全くの別物です。

どういうことか順を追って解説しますね。

昔、というほど昔ではないですが、今と違ってお肉の流通の技術が発達していない頃は肉を骨付きのまま冷蔵庫で保管する、というのが一般的でした。

そんな状態で冷蔵庫で保管される肉は、場合によっては表面が黒く変色したり、パサパサに乾いて見ようにによっては腐っている風にも見えました。

ただ、それは腐っているのではなく当時の冷蔵庫の中の環境と骨付き肉、という特定の条件下でのみ発生する肉の熟成というものが進んだ状態に他ならなかったのです。

今ではこの熟成手法を今では枯らしと呼んでいます。(この記事のサムネイル画像が枝枯らしをした肉です)

その様子を見た当時の人たちが、肉は腐りかけが美味いと言い出したのが、この有名な言い回しが生まれた経緯なのだと僕は思っています。

推察に過ぎない話かもしれませんが、ほぼ間違いなくこれが理由でしょう。

僕も骨付き肉の状態で枯らしされたものを見たことがありますが、確かに肉の表面は黒ずんでいました。

今でこそ「熟成」という言葉は有名になりましたが、この言葉が一般的でなかった当時、熟成は当たり前のこととして捉えられていたのでしょう。

こういった言葉の経緯を知らずに熟成と腐敗を勘違いした人がカットした後の肉を冷蔵庫で寝かせたりしますが、塊の状態から切った後に旨味が増えるということはまず無いので勘違いしないように気をつけてください。

旨味が増えるのは塊肉の状態の時で、そこから切った後は酸化が進むだけです。

例え熟成された肉であったとしても商品用に切ってしまえば一番美味しいのは絶対に切りたてですからね。

放置した肉を食べるのは体調を崩す原因になります。

熟成は当たり前?

さて、そんな腐敗とは異なる熟成ですが、今ではその手法も多岐に渡ります。

ただ一つ言えるのは、昔のように冷蔵庫で自然と熟成が進む環境ではありません。

今は以前と違い、真空パックされた塊肉での流通が基本だからです。

真空パックの肉がどういうものなのかと言うと、僕のYouTube動画で最初に登場する塊肉を真空パック詰めされたものがそうです。

 真空パックされた肉は、当然ですが空気に触れないですし、骨付きでもないので先に述べたような熟成が進むことはないんですね。

なので、今ではたとえ肉屋であろうと簡単に骨付き肉の熟成を行うことは難しくなりました。

年配の方が「昔の肉は美味しかった」と言われているのを聞いたことがある人もいるかもしれませんが、これもここまで言ったようなことが理由でしょう。

現代の熟成

それじゃあ肉屋は熟成が出来なくなって、レベルが低くなってるの?

と思われるかもですが、もちろんそんなことはありません。

以前の方法での熟成は数を減らしたものの、別の形での熟成が台頭しています。

果たしてそれを熟成と言えるかどうかはまた別の問題ですが、最近の主流は「ウェットエイジング」と呼ばれる手法です。

ウェットエイジングは先ほど言ったような真空パックされた肉の状態で行う熟成です。

骨から切り出されて真空パックされた肉は一定の日数がたつと旨味が増します。

その日数は肉に含まれる水分量に大きく左右されますが、だいたい2週間くらいでしょうか。

今回詳しくは触れませんが、これは肉に含まれるアミノ酸などが影響しています。

ただ、このウェットエイジングというものを熟成ではないとする意見もあります。

肉を部位ごとに真空するのは、あくまで長期保存を目的としたものであり、旨味の数値が変化するのは不随的な要素にしか過ぎないという意見ですね。

正直なことを言うと僕も、このウェットエイジングを熟成と言い張ることに対して思うことはあります。

ただそれでも真空後に旨味が良くなるという実情があるので、現代の熟成の一つと言われています。

真空パックの流通

最初の「肉は腐りかけが美味しい」という話からだいぶ脱線してきましたが、真空パックの話をしたので、最後にもう一つだけ語らせてください。

真空パックでの流通は熟成という観点からは、少々見劣りするという印象を持たれた方もいるかもしれませんが、それ以上に大きなメリットを現代の食肉産業に与えています。

それは増え続ける消費者ニーズに応えることが出来るという点です。

真空パックにより肉の保存期限は骨付きで保存してたころより飛躍的に上昇しました。

さらに必要な分だけを、あらかじめ小分けに真空することで、肉のロスを最小限に留め、鮮度を保ちながら提供できるようになっています。

もし、今でも真空パックではなく骨付きでの流通がメインだったなら、今ほどいろんな形態のお肉の店が無かったでしょうし、肉の価格も比べようもないほど高価なものになっていたはずです。

そうなると気軽に肉を食べるということも難しかったでしょう。

本当の意味での熟成である枝枯らしやドライエイジングが難しくなり、聞いただけでは昔より劣った印象を受けるかもですが、この真空パックという肉の流通形態は、時代に沿って肉業界が進歩した証と受け取った方が正しいのかもしれませんね。

最後に

ただし、真空パックでのブロック肉流通がメインになった今でも、昔ながらのやり方で熟成をしているお店もあります。

ここでお店の紹介はしませんが、本当の意味で「肉は腐りかけが美味い」という言葉に興味がある方は、一度枝枯らしやドライエイジングをやっている店舗を調べてみることをおすすめします。

 

最後かなり話が逸れましたが、最初に言ったように「腐りかけの肉が美味い」はあくまで言葉の綾であり、冷蔵庫の中で肉を不必要に放置しないということだけ今回覚えていただければ幸いです。

何度も言いまずが、肉が美味しいのは間違いなく切りたての鮮度がいい状態ですからね。

それでは今回はこのへんで失礼します。

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