牛肉の一頭買いは何が凄い?
いらっしゃいませ。
今回は牛肉の一頭買いについてお話しします。
牛一頭買いって聞くと、「おーなんだか凄そうだな」ってなりますよね。
店の看板にデカデカと一頭買いって書いてあったり、YouTube上でも牛一頭買ってみた、なんていう動画がでてたりしてます。
でも、言葉の響きは凄いけど、実際のところ何が凄いの?って気になりませんか?
今回はそんな疑問にこたえてみようかなと考えてます。
なので、牛一頭丸々買ってみたっていう事の真相が知りたい方は、ぜひ最後までお付き合いください。
それじゃあやっていきましょう。
一頭買いとは?
まずは、そもそも牛の一頭買いって何なの?って話ですよね。
言葉通りの意味でいくなら、生きてる牛を買ってきて自分で捌くよ!みたいな印象をうけるかもですが、これは違います。
正しくは、牛がと畜された後、枝肉っていう状態になったものを、食肉市場で買い付けることです。
市場以外の相対取引で買い付けるのもそうですね。
専門用語多めになっちゃったんで、かみくだいて言うと、お肉がたくさん売ってる市場で、500kgくらいある、めちゃくちゃでかい肉の塊を買う事です。
どうですか?イメージできますかね?
お肉業界関係者の方なら、知ってる事なんですが、そうじゃなければ普通、でかい肉の塊、ここでいう枝肉なんて目にすることがないので、分からないと思います。
枝肉っていうのは、牛がと畜された後、頭や足先を落とし、皮や内臓を処理して、さらに背骨のところで綺麗に縦半分に分割された状態のもののことです。
で、この枝肉が、お肉ばかり大量に集まる食肉市場っていうところで、競りにかけられて1日200頭以上取引されてます。
この枝肉ですが、高価なものだと1kgあたり3500円とかするので、一頭が500kgだとすると単純に180万くらいするわけです。
一つ180万するお肉を買いました!ってだけで「凄い!」ってなりますよね。
でも、牛肉の一頭買いって、お店側がただ単に、ドヤ顔するためにやってるわけではないんですね。
じゃあ何のためにやってるのか、一頭買いの本当の価値って何なのかに迫ってみます。
一頭買いは何のためにやるのか?
なんのためにやるのか、結論からいくと。
それは、自分が本当に扱いたい牛肉を購入するためです。
さっきも言ったように、一頭200万近くする肉を買ってきて凄いでしょ!
みたいな宣伝目的っていうのは間違いでは無いですし、それをメインの目的にやってるところもあると思います。でも、本来の目的は違うと僕は思ってます。
自分にとって、会社にとって本当にこだわるべき肉を見つけるために、一頭丸々買う、これこそが一頭買いの真価です。
ここまで言うと感の言い方は気づいたかもしれません。
本当に欲しいものを買うためにやるのが一頭買いってことは、それ以外のお肉の買い方があるの?って話ですよね。
もちろんあります。それがパーツ買いって言って、ロース肉とかバラ肉、モモ肉みたいにバラバラになった状態のお肉を仕入れることを言います。
むしろ、ほとんどのお店でこっちのパーツ買いっていうのが採用されてます。
さっき、本当に欲しい肉を手にいれるために一頭買いをするって言ったんで、パーツ買いのほうにある種、妥協感が漂ってしまってますが、それは違いますよってことだけは言わせておいてください。
どっちの仕入れ方法が良い、悪いの話ではないんです。
ということで、もう一歩踏み込んで、一頭買いとパーツ買いそれぞれのメリット、デメリットみたいなものを話してみようと思います。
これを知ってると、一頭買いしてる焼肉屋さんとか行ったときに、話のネタにすることができるんでぜひ聴いてみてください。
一頭買いとパーツ買いのメリット、デメリット
まず一頭買いのメリット、デメリットですね。
メリットはもちろんさっきから言ってるように、自分が欲しい肉をこだわって仕入れることができる点です。
以前は一頭で買った方が安いなんてこともありましたが、今では、骨を取り除く作業が大変なのと、保管の問題で、コスト面でのメリットはずいぶん少なくなりました。
あと、メリットとして一頭買いしてるよ!ってことを大々的にアピールできるのも忘れちゃいけないですね。
次にデメリットですが、自分で肉を本格的に選ぶことになるので目利きが難しいっていうのと、一頭分のお肉を綺麗に使い切るのが大変っていうのがあります。
目利きに関しては、専門のプロがいるっていうと大変さがわかるでしょうか?
いわゆる肉選びの達人みたいな人が世の中にはいるんですね。
選んだ肉次第でお店の利益が激変するといっても過言ではないので、その責任は絶大です。
プロでさえ難しい枝肉の目利きですから、普段からお肉に携わっていない人が、良い肉を選ぶっていうのは現実的じゃないですね。
そして、もう一つ、一頭分のお肉を使い切るのが難しいってことです。
枝肉は牛のお肉全部のことで、言い換えれば、たくさんのパーツ、部位の集合体です。
よく売れる部位もあれば、あまり売れない部位もありますし、季節によってそのへんの売れ具合は変わってきます。
わかりやすく簡潔に言うと、「売れない部位あまっちゃうけど、どうすんの?」って話です。
僕もこれまで一頭買いをやってきましたし、今も一部やってますがこの問題には本当に頭を悩ませます。
全国の一頭買いをやってる肉関係者全員が同意してくれると思います。
一頭丸々買っちゃったのはいいけど、バランスよく売り切らないと、めちゃくちゃ損するよっていうのが最大のデメリットかもしれないですね。
それじゃあ次にパーツ買いのメリット、デメリットにいきましょう。
と言っても、これはさっきの一頭買いのメリっト、デメリットを反対にしたものがあてはまるかもしれません。
メリットは、細かく分けられた部位ごとに仕入れるので、利益管理がしやすいことですし、
デメリットは仕入れの幅が制限されることです。
あと一頭買いであれば骨付きの状態で仕入れることも場合によっては可能なので、骨つき肉が手に入らないのもデメリットかもしれません。
こだわる方は骨つきの状態で仕入れて、熟成させるって人もいますからね。
まぁ、ようするに、一頭買いとパーツ買いのは表裏一体みたいな関係にあるよってことですね。
それじゃあ結局、どういう仕入れが理想だと思ってるの?ってことになってくるかと思います。
ありきたりな答えかもですが、使い分けが一番なんじゃないでしょうか?
実際僕もパーツ買いすることが多いですが、一頭で仕入れることもあります。
それぞれの長所と短所をうまく補いつつやるのが、一番スマートな仕入れだと個人的には考えてます。
具体的には、一頭買いで不足した部位を要所要所で、パーツ肉を使って補うとかですね。
はい、ここまで話してきて、当初の一頭買いって何が凄いの?ってことからだいぶそれてきちゃいましたね。
今回のまとめ、にはなりますが、いったん話を戻すことにします。
まとめ
真空技術の発達にともなってパーツでの流通がメインになった牛肉ですが、世の中には、絶対に枝肉での一頭買いだ!と豪語する人もいます。
宣伝目的に、牛一頭買いました!も、もちろん良いと思いますが、やっぱりその本当の意義は、お肉へのあくなき探究心だと思ってます。
肉の世界に生きる者にとって、自分で選んだ肉が、長年の経験をもとに培った目利きで選び抜いた肉がみんなに喜ばれることほど嬉しいことはありません。
そうやって喜ばれることが積み重なって、そのお店が選んだ肉自体がブランド価値をもつこともありますし、実際にそういうお店を知っています。
僕もそういう存在になれることを目標に日々頑張っています!ということで、しめさせていただこうかと思います。
それでは今日はこのへんで失礼します。
またのお越しを。
コメントを書く