【注意喚起】肉の生食についてプロ目線で物申す
いらっしゃいませ。
今日は牛肉の衛生知識を高めようっていうことで
わかりやすい例としてローストビーフと牛肉のタタキを上げて、牛肉の生食についてお話しします。
そのあとで、僕なりに肉の生食について個人的な見解を述べさせてもらおうと思います。
難しい言葉を使うかもですが、必ず知っておいて欲しいことなんでぜひお付き合いください。
【→今回のブログ記事を動画で見る方はコチラ】
ローストビーフとタタキの違い
はい、それじゃあなんですが、牛肉の生食に触れる前にローストビーフと牛肉のタタキって違いが分かりますか?
おそらく多くの方が、ローストビーフはそれなりに火が通ってて、タタキはそれよりも生っぽい感じ、みたいな認識だと思います。
確かにそれで合ってるんですが、お肉の取り扱い的には完全に別物です。
この違いを知らないとかなりマズイってくらい重要なことです。
どう別物なのかというと、ローストビーフは特定加熱食肉製品、タタキは生食用肉に分類されます。
特定加熱食肉製品と生食用肉
言葉が難しいですよね、要はローストビーフは肉の中心まで加熱して殺菌したもの、タタキはそうじゃない生の肉ってことです。
でもタタキって周りを火で炙ってるから、加熱されてるんじゃないの?
と思われそうですが、周りをかるく炙っただけでは加熱して殺菌した、とは言えないんですね。
加熱して殺菌するには肉の中心部を75度で1分っていうのが、決まり文句です。
で、牛肉のタタキはたとえ表面だけ炙っていようが、生食肉扱いになります。
生食肉って言うとユッケやタルタルなんかと同じ扱いになりますね。
それじゃあ、タタキが生食だよってことが分かったところで、タタキが生食用の扱いだと何がマズイの?ってことをお話しします。
「知らない」じゃ済まされない生食用肉
これは、タタキを生食肉として認識せずに提供しているお店があったり、生食用じゃないお肉を買ってきて家庭でタタキを作る人がいることです。
最初の質問の答えに戻るんですが、ローストビーフとタタキって違いがハッキリ分からないって方は多いです。
なんならプロの人でもしっかりした知識を持たず、え、知らなかったという人もいます。
お肉を仕事にしていて、これを知らないというのは正直言って論外なんですが、一般の方からしたらわかりづらいことだと思います。
だってこういう知識って積極的に保健所のホームページを調べる、とかしないと手に入らないですからね。
しかも、最近では色んなSNSや動画サイト、動画アプリでかなりアウトな牛肉の食べ方が投稿されていることがあるんで「牛肉って生でも食べれるんだ」と勘違いしているコメントも珍しくないです。
実は今回一番言いたいことなんですが、牛肉を生っぽい食べ方をしている投稿を見つけたら、美味しそう!という感想を持つだけじゃなくて、その食べ方本当に大丈夫なの?と考えてみて欲しいんです。
僕は、そういうところの世間の意識が変われば、肉の食中毒はもっと減ると思ってます。
生食肉はどうすれば食べれる?
話がそれてしまいましたね。もとに戻して牛肉のタタキについて、そしてユッケやタルタルをちゃんとした手順をふんで提供しているお店があることも知っておいて欲しいです。
生食肉はいくつかの基準を満たしたお店であれば、提供、販売が可能です。
その基準っていうのが加工基準、調理基準といったものです。
加工基準、規格基準と言ったりもしますが、これはお肉の加工、イメージとしてはブロック肉を扱う時に適用されるもので、調理基準はその名の通り、調理の時に適用されるものです。
流れの一例をあげると、加工基準を満たした肉の業者さんから仕入れた肉を、調理基準を満たした飲食店、販売店が消費者に提供するって感じですね。地域によって微妙に違いますが、だいたいこんな感じです。
この工程のそれぞれに、かなり厳しめな決まりがあるんで、生食肉を扱えるお店っていうのは多くありません。
器具の高温洗浄はもちろんのこと、施設内の作業スペースの区分け、生食肉を扱うための資格、塊肉の表面から1cmを60度で2分以上加熱などなど、実際やろうとするとかなり大変な要件があります。
このへんの詳しいことは、厚生労働省のQ&Aに記載してあります。
厚生労働省「生食用食肉(牛肉)の規格基準設定に関するQ&A 」
ただ、この厳しい条件をクリアしたお店っていうのも存在するので、どうしても生の肉が食べたいという方は、お店に生食肉を扱う許可を得ているか確認してからいくのをお勧めします。
内臓肉と鶏肉の生食について
そして、生食肉つながりでもう一つ言いたいことがあって、内臓肉や鶏肉の生食についてです。
牛のレバーと豚肉の生食は法律で禁止されてますが、レバー以外の牛の内臓肉、鶏肉の生食はなぜか禁止されていません。
牛の内臓肉っていうのは、いわゆるホルモンですね。小腸とか大腸、センマイ、ハラミやタンなんかもこれに入ります。
日頃肉屋をやっている僕からすると、ホルモン系についてな生食の法律がないのは本当に謎です。あ、鶏肉はカンピロバクターが潜んでいる可能性があるので、僕は生では絶対に食べません。
で、ホルモンですが小腸や大腸を生で食べるのは大腸菌のリスクが高すぎるので、さすがにそれは無いとして牛タンやハラミを刺身で食べるのも正直抵抗があります。
なんでかと言うと、ホルモン系はいくら調理の場で気をつけていても、屠畜されてからブロック肉にされるまでの生食用の基準がないからです。
タタキやユッケに使うような牛の一般的な部位には、さっき言ったような加工基準、調理基準があるのに、ホルモン系にないのは「?」ですよね。
これが無いので生食用の厳しい基準はクリアできないけど、
ホルモンなら生で出せるじゃん!
ってことで生食を提供しているお店はけっこう多いです。
特に怖いなと思ったのは、牛タンの刺身を作る時に、
牛タンの皮を剥ぐ時に最初から最後まで同じまな板、包丁で調理された動画を見た時です。
もし牛タンの刺身をするなら、皮を剥ぐ時に牛タンの上下、左右4つの面をそれぞれやるたびに、殺菌された違うまな板、違う包丁でやらないと、皮を剥くたびに菌が付着してしまいます。
それくらい牛タンの皮の表面には菌がついてます。牛タンは牛のベロなんで当然ですよね。
屠畜場から新鮮なものを直送とか、表面をボイルしてるから大丈夫という謳い文句のところもありますが、あくまでそれは独自の基準なのでリスクはあります。
法律で禁止されてないからOKでしょ、と言わればそれまでですが、それでもこれだけ牛肉の食中毒の事件が発生するたびに色んなところで話題になるので、提供する側も食べる側も慎重になるべきだと思うんですよ。
nikuhackでは生食用肉は取り扱っていません
そこまで言っておいて、じゃああなたのお店はどうなんですか?と言われそうですが、うちでは生食用のお肉の提供は一切やっていません。
よくタタキ用のお肉が欲しいという問い合わせもいただきますが、事情を説明してお断りさせていただいています。ローストビーフにしても、ちゃんと中心部まで規定の温度と時間まで加熱して殺菌したものを販売しています。
やっぱり、何かあったとき一番の被害を被るのは、お肉を買ってくれたお客さんですからね。
最後に
今回の話って何も肉だけの話じゃなくて他の食材を生で食べる時も同じですよね。
生の肉は見栄えも良いですし、実際食べたら美味しいことも知っています。
でも食中毒のリスクは切っても切り離せないものなので、できれば知っておいて欲しいんです。
本当なら生食について、あやふやになっている制度を、もうちょっと明確にして欲しいところですが、どうしようもないことなので、僕に出来ること、
こういう記事や動画での注意喚起は今後も続けていこうと思います。
ちょっと今回もしかしたら物議をかもすような内容だったかもしれませんが、お話しさせていただきました。
生食についてみなさん思うところはあるでしょうが、何かあればコメント欄まで意見をいただければ幸いです。
では今日はこのへんで失礼させていただきます。ありがとうございました。
コメントを書く